信長、マーケティングで天下獲り|~第5回「信長、価格戦略を学ぶ」~

登場人物

織田信長

信長

 

  

織田信長
言わずとしれた、戦国時代の天下人。
どういうわけか現代にタイプスリップを果たし、現代でマーケティングを学ぶことに。 

英義

 

  

橋場英義(ハシバヒデヨシ)
CCCマーケティング株式会社に務めるプロのマーケティングコンサルタント。
かの“羽柴秀吉”とは、なんの関係もないらしい。

 

 

 

信長、ライバルへの対抗を決意する

織田信長

信長

サルよ、信長じゃ! サルはどこじゃ! サル、おいサル!

英義

ああ、信長さん。こんにちは。

織田信長

信長

なんじゃ、今日は素直じゃな

英義

サルサル大声で呼ぶのって、僕がいやがる姿を見て面白がってますよね。

なので、反応するのやめました。えーと、今日はどうしました?

織田信長

信長

…うむ、今回は『信長バナナジュース』の値段のことでお主に相談があってな。

最近、『タケダバナナジュース』なるものが領地を拡大していることを知っておるか?

 

英義

『領地を拡大』? ああ、シェアを伸ばしているということですか。

それにしても『タケダ』って、どこかで聞いたことのある名前ですね

織田信長

信長

うむ。『タケダ』といったら、“甲斐の虎”と言われた武田信玄しかおらん。

当然、『タケダバナナジュース』も奴の策じゃろう。

まさか、今の世でも信玄がわしの前に立ちはだかるとは。抜かっておったわ

英義

いや、ただ偶然に同じ苗字というだけだと思いますけど……

織田信長

信長

信玄とは、途中まではお互いに力量を認め合い割拠しておったのに、

突然手のひらを返すように裏切られた。あの腸の煮えくり返る思いは忘れることはできん。信玄の後塵を拝するなど、あってはならんのだ!

英義

僕の言ったこと、聞いてませんね。

で、それとバナナジュースの価格がどう関係あるんですか?

織田信長

信長

 

うむ。お主の申した“えすいーおー”や“えすえぬえす”を試したところ、

『信長バナナジュース』もずいぶんと知られるようになってな。

わしの力は、今の世でも十分に通用することがようわかった

英義

どちらも教えたのは僕ですけどね

織田信長

信長

ただ最近、『タケダのほうが安いから、タケダでいい』という声を

ちらほらと聞くようになってな。

 

 

織田信長

信長

もっとも『タケダは安いけど、なんか薄い。

信長のほうが高いけど、濃くておいしい』と言う客もたくさんおるがな

英義

なるほど。

でもメインの客層が若い女性ということを考えると、価格にはシビアかもしれませんね

 

織田信長

信長

あと『タケダは、やさしいイケメンスタッフ多いよね』などと言う客もおる

英義

うーん、価格とサービスの両面で比較され始めたということですか。

これは強力なライバル登場かもしれませんね

織田信長

信長

わしも、近々領地を拡大して一気にすべてのJKを囲い込もうと考えておるところじゃ。

タケダが自陣を広げる前に手を打たねばならん。

織田信長

信長

やさしいイケメン云々は、わしがおるので問題はないとして、

ジュースの値段をどうするか。そこをサルに教えてほしいのじゃ

英義

 

……イケメン? まあ『蓼食う虫も好き好き』ですからね。

確かに、ここは価格設定について考えるべきだと思います。

では今回は、値決めの問題、つまり“プライシングのお話をしましょう

 

信長、プライシングを学ぶ

英義

 

まずプライシングの前に、信長さんは“マーケティングの4P“を知ってますか?

織田信長

信長

なんじゃそれは? 旨いのか?

英義

これは、”Product=製品”、”Price=価格”、”Place=流通”、”Promotion=販売促進”

という、マーケティングを考えるうえで重要な4つの戦略の頭文字をとったものです。

この4つを組み合わせて施策を考えるのが、マーケティングの基本です

織田信長

信長

「4つの戦略? 信玄の『風林火山』のようなものか?

英義

どうしても武田信玄から離れられないんですねえ。

僕が言いたいのは、価格決定=“プライシング“は、

商いを成功させるためにとても重要な要素のひとつということです。

英義

だから『だいたいこんなものかな』とか、軽い気持ちで価格を決めてはダメなんです。

ちなみに、いまの『信長バナナジュース』の価格はどうやって決めたんですか?

織田信長

信長

『ジュース1杯をつくるのにこのくらいかかってるから、

わしらの儲けを乗せたらだいたいこんな感じじゃろうか?』といった算段で決めておる

 

英義

それ、いま言ったダメなパターンじゃないですか!

もう少しちゃんと考えないと

織田信長

信長

結構、知恵を絞ったつもりじゃったんだがのう……

英義

プライシングでまず考えなくてはいけないのが、その価格にする”目的”です。

英義

たとえば、収益向上よりも一気に市場シェアを拡大させることを重視するのか、

あるいは最大限の利益確保を重視するのか、それともバナナジュース業界での

生き残りをかけてギリギリの価格でいくのか、などということです。

英義

『信長バナナジュース』のビジネス戦略と表裏一体と言ってもいいくらい、

重要なポイントです

織田信長

信長

『生き残りをかける』とな! まさに武将の生き様そのものじゃ。気に入った!

それでいこう!

英義

でもお話を聞くかぎりでは、『信長バナナジュース』 って、

そんなに切羽詰まった状況ではないですよね。

あまり極端な値付けをすると、あとで調整するのが大変ですよ

織田信長

信長

なんじゃつまらん。ならば先に申したように、目的は”領地の拡大”じゃ。

信玄のものになる前に、できるだけ我が領地を広げておかねばならん。

さらに、信玄に攻め入られた場合の兵糧も確保しておく必要もあるのう

英義

そうですね。ではシェア拡大を目指しながら、

その中で売上も最大化できるようなプライシングを考えてみましょう  

織田信長

信長

うむ。それなら信玄も、ぐうの音も出るまい!

英義

ちなみに価格には上限と下限があり、プライシングはその幅の中で行いますが、

下限は製造コストになります。

これより安かったら、売れば売るほど赤字になっちゃいますからね。

英義

一方の上限は、お客さんがここまでなら払ってもいいと思うギリギリの金額です。

これは機械的に割り出せるものではないので、リサーチが必要になります。

もっとも、どんなにおいしいバナナジュースでも10万円は出さないだろうというのは、

想像がつきますけれどね

 

織田信長

信長

ん? わしなら出すぞ。

鉄砲を手に入れるために、堺の町を自分のものにしたわしじゃ

英義

ちょっと話が違うので、次にいきますね。

それで、プライシングには、ざっくりいって3つの考え方があります。

 

コスト志向
製造原価や販管費などのコストに、目標とする利益を乗せて価格を決める。
自社の都合に合わせたプライシング。

需要志向
顧客の「ここまで払ってもよい」という感覚や、ニーズをもとに価格を決める。
需要側の視点に合わせたプライシング。

競争志向
ライバル企業の設定価格を基準にして、自社商品の価格を決める。
競合の動きに合わせたプライシング。

英義

この3つの中でもいろいろと細かく分かれるんですが、

まずはこんな考え方があるということを覚えておいてください

織田信長

信長

いろいろあるのう……。しかしサルよ、これだけではどれで決めればいいのか、

わしにはわからんぞ。槍と鉄砲くらいに違いがあるものなのか?

英義

捉えようによっては、そのくらいの差があるかもしれませんね。

じゃあ、簡単にそれぞれの特徴をまとめてみましょう

●コスト志向
メリット  コストを元に計算するので、合理的に価格をはじき出せる
デメリット 自社の都合に合わせた価格なので顧客に受け入れられるかは不明

●需要志向
メリット  顧客が感じている相場価格が元になるので、受け入れられやすい
デメリット 調査・分析に手間がかかる

●競争志向
メリット  目安とする基準(プライスリーダー)があるので、判断がしやすい
デメリット 価格競争に巻き込まれる可能性がある

 

信長、プライシングに挑む

織田信長

信長

うーむ。これを見ると、どれかひとつで決められるものでもないような気もするな

英義

確かにそう思うかもしれません。

プライシングの際には、コストはもちろん、

市場環境や競合の状況なども考慮しなければならないのは当然です。

英義

そこで思い出してほしいのが、その価格にする“目的“です。

攻めるのか守るのか、そして攻めるのであればどのように攻めていくのか。

つまり、何を重視して値決めをするのかということです。

英義

『信長バナナジュース』の場合は、まず”シェアの拡大”、

そして”売上の最大化”が目的ですよね?

織田信長

信長

そうじゃ。となると、できるだけ安いほうがいいかのう

英義

安いほうが有利なのは確かですが、

ただあまり安すぎても消費者の立場からは不安ですよね。

英義

コストカットをしまくって20円でバナナジュースを売ることができたとしても、

お客さんからは『安すぎる。飲んでも大丈夫なのか?』と思われるのがオチでしょう。

安いにしても感覚値がありますからね

織田信長

信長

難しいのう

英義

だから、『なんとなくこんな感じ~』といったやり方ではダメなんです。

基本的なプライシングはこんな流れだと思ってください

織田信長

信長

なるほど。やはり『エイヤッ』で決めてはいかんのじゃな。

考えてみれば、わしも合戦のときには、地形やら兵の配置やら、

相当に知略を尽くしたからのう

英義

それを思い出してもらえれば、何をどう考えたらよいのかつかめてくると思います。

たとえば需要志向でいくのであれば、まずは一度、いくらくらいまでなら

信長バナナジュースを買いたいと思うか、JKたちにリサーチしてみてはどうでしょう。

英義

そこからムリのない範囲で価格を下げることができれば、品質を考えると

値ごろ感もあるだろうし、きちんと売上を伸ばすこともできそうです

織田信長

信長

なるほど、まさにJKがわしらの命運を左右するということか!

英義

あるいは信長さんの資金に余裕があるなら、競争志向で

『タケダバナナジュース』と同じくらいまで値下げをするというのも手です。

品質が上で価格が同じなら、『タケダバナナジュース』のシェアを奪えるだろうし、

シェアの拡大につれて売上の最大化も実現可能だと思います

織田信長

信長

うむ、合点がいった! さっそく店に戻って、

家臣たちと“ぷらいしんぐ”について考えるとしよう。

 

織田信長

信長

サル方式で、信玄の風林火山も返り討ちにしてくれるわ!

サルよ、今日も助かった。礼をいうぞ!

英義

サル方式……。ちょっと引っかかる部分もありますが、お役に立ててよかったです。

『天下布商』に向けて頑張りましょう!

 

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